大阪府栄養士会スポーツ栄養研究会


11月定例会 オンラインセミナー報告

コロナ禍の東京オリンピック 試合当日までの栄養サポート

開催日 令和31118日(木)

講 師 森永製菓inトレーニングラボ

公認スポーツ栄養士  三好 友香 氏

 


20217月コロナ禍(緊急事態宣言下)のなか東京オリンピックが行われました。その大変な環境の中で栄養サポートをされた公認スポーツ栄養士三好友香氏にお話を伺った。

 まずは一部工事中のinトレーニングラボのなかを案内してくださいました。見る機会はなかなかあるものでは無く、興味深いものでした。

以下、三好氏の栄養サポートについてのお話です。

「楽しく・笑顔で・柔軟に」をモットーに自己調整力の高い選手を育成すること、また、ニーズに柔軟に対応することを意識して活動している。その中で「競技特性を知る」・「選手の特性」を知ることが大切であると考えている。

オリンピック選手になるためには「国内試合→国際試合(アジア選手権・世界選手権)→内定獲得しオリンピック出場確定」の流れで決まるので各試合でポイントを獲得することが必要になる。どの試合にピークを持っていきポイントを獲得するか難しい側面もある。

競技ごとの選考スケジュールは複雑な経緯がある。それに加えて一年延びたことで選手権を逃してしまうこともあり、選手共々苦々しい思いも経験した。

そもそも東京オリンピックが実施されるのかどうかも分からず不安のなかで、目標を定めきれず精神的にきつい状況が続いていた。

某選手への栄養サポートです。

(選手の特徴・栄養サポート対応等について)

Aさん:陸上選手

・主に自炊

・食に興味がない(時には食事をすることをも忘れるほど)

・たんぱく質1.22g/

・体重が落ちやすい(軽いと体が浮いてタイムが落ちる)

・補食計画を作成し提供(250300kcal

・フェリチン低値に対する栄養教育を行う

・帯同時は種々の食材を駆使し「苦痛なく美味しく食べられる」を目指し提供した。

Bさん:柔道選手

・主に自炊(定期的に食事分析)

・自己調整力があり、減量のしかたを自分で確立している(選手の感覚を大切にした)

・好きな食べ物を無視しない(チョコとコーラ)

・たんぱく質2.1/kg

ワンタップ(ONE TAP SPORTS)を使って毎日のコンディショニングを可視化し指導に役立てた。また、オリンピック当日のスケジュールにあわせて栄養補給計画など2回ほど試合前にプレを行った。

現地で観戦することができず残念な今回の東京オリンピックであったが、「オリンピックがあってよかった」と感じている。担当した選手の中では銀メダルが最高の結果であった。

選手の精神状態がきつい中、どのような声掛けがよいのか思案する日々であった。

この状況では栄養の正しい知識や情報を伝えるというような段階ではないなという場面も多く、栄養サポートの難しさを痛切に感じた。

2024年のパリオリンピックに向けて、選手と共に目標を達成できるスポーツ栄養士を目指したい。

 

現場の選手の状況や栄養サポートの状況が目に浮かぶ臨場感のあるお話を聞くことができた。

 

 

ご報告

久しぶりの投稿になってしまいました。

未曽有のコロナ禍により、私たちの活動も休止を止む無くされ現在に至っています。

今後、Webによる活動ができないか模索中です。

今しばらくお待ちください。今後ともよろしくお願いいたします。

 

昨年度末に龍谷大学農学部食品栄養学科上田由喜子氏より投稿いただきました。

報告遅れてしまいましたことお詫びいたします。是非、ご一読ください。

今年1月に「栄養大阪」には掲載させていただいています。

 

高校野球選手を対象とした栄養サポートの実際
CANフレームワークを活用したアプローチ~

 

所属 龍谷大学農学部食品栄養学科

氏名 上田由喜子

 


 競技力向上のためには、トレーニングに加えて食事も重要と考えられている。本稿では、自宅から通学している高等学校硬式野球部所属の選手に対する、栄養サポートについて紹介する。アスリートやスポーツ現場における指導者から求められている栄養サポートとは、単に良好なコンディションの維持や疲労回復だけではなく、コンディションや練習効率を向上させ、結果的にパフォーマンスの向上に結びつくサポートといえる。

一方、身体活動の予測とそれに対する食べ方を選手自身が理解し、対応できるために大きく影響するのが栄養教育である。栄養教育とは、個々の健康につながるような食物選択と、栄養・食関連行動を自発的に取り入れるために設計された、教育的戦略である。知識、情報、スキルを提供すると同時に、発達、成長、変容を促すプロセスでもある。しかし、食習慣に関する態度と実践は必ずしも関連するとはいえず、態度と実践が結びつくような教育が必要とされている。行動変容を導く栄養教育は、知識の提供だけでなく行動科学理論を用いることの有効性が報告されている。しかし、個人の行動変容はしばしば難しく、行動経済学の理論の応用が注目されている。なせなら、行動科学による健康づくりの効果を高め、その限界を克服するための様々な示唆を与えてくれると期待されているからである。

そこで、食への行動経済学の応用例として、CANフレームワークを紹介する。CANフレームワークは、行動経済学を先駆的に食の分野で実証研究を重ねてきたWansinkにより、健康的な食の選択と摂取を推進する考え方として示されたアプローチである。”From Can’t to CAN”(「できないからできるへ」)の言葉に表されるように、困難である行動変容を(自然と)可能にする戦略の枠組みである。CANは、”Convenience”, “Attractive”, “Normative”の頭文字からなっている。このフレームワークを活用し、まず“Convenience”は利便性を意味していることから、選手に健康的な食べ物を「見やすく」「取り組みやすく」するための教材、「野球選手のための食事ガイド」およびツールとして「野球盤」を作成した。次に、”Attractive”は「期待」など魅力的にするという解釈から、個々にチャレンジしたくなる目標を設定し実行へと促した。また、食べることも練習であることから、”Normative”は、取り方(盛り方)、食べ方(食べる種類や量)を決まりごとにする(あるいは、日常化する)こととした。そのための教材として、弁当箱法を応用したグループワークを行った。盛り方、食べる種類や量を決まりごとにして日常化することを期待し、ルールは、①1000mlの容器でほぼ1000kcalになるように詰める、②表面積比は主食2:主菜1:副菜1、③主食は300g、④主菜は23種類(肉類、魚類、卵類)、⑤副菜は3種類(各70g程度)とした。横仕切り(あるいは縦仕切り)とし、量は必ず確認することを徹底した。

 

選手の反応から、「CANフレームワーク」を活用したアプローチは、野球選手に必要な食事内容や量への理解を深め、食態度に影響したことが推察された。トレーニングとリンクした有効な栄養教育の方法と効果について、求められる科学的根拠を示すことができるよう今後も研鑽していきたいと考える。今回の報告について、Health Education Journalに掲載予定であり、ご一読いただければ幸いである。

 

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