3月定例会 報告

3月定例会  3月15日(木)

「スポーツ現場で求められる栄養サポート-アスレティックトレーナーの視点から-」

 

開催日 平成30315日(木)

講師   大阪学院大学経済学部 講師

松尾 信之介 氏

 

 

今回は、大阪学院大学経済学部の講師であり、日本陸上競技連盟医事委員会トレーナー部委員および日本オリンピック委員会強化スタッフ(医科学スタッフ)を務める松尾信之介氏をお招きし、アスレティックトレーナーの視点から、スポーツ現場における栄養・食事の現状や栄養サポートの必要性についてお話を伺った。

 

 

. アスレティックトレーナーとは

日本体育協会公認アスレティックトレーナーになるためには、協会により定められたカリキュラムを受講し、筆記試験や実技試験などの検定試験に合格する必要がありますが、講習会の受講条件として、日本体育協会の加盟団体、または協会が特に認める国内統轄競技団体の推薦が必要とされており、狭き門となっています。これとは別に、日本体育協会に承認された大学や専門学校などでカリキュラムを履修することができるシステムも存在します。

アスレティックトレーナー(以下、ATとする)の役割は、「スポーツ外傷・障害の予防」、「スポーツ現場における救急処置」、「アスレティックリハビリテーション」、「コンディショニング」、「検査・測定と評価」、「健康管理と組織運営」、「教育的指導」と多岐にわたります。私はATを目指す学生に向けて、専門的な知識やスキルを身につけ、「選手やドクター、栄養士と対等に話せるようになりなさい」と指導しています。

 

Ⅱ.スポーツ現場における栄養・食事の現状

私の専門種目である陸上競技を例に現場における栄養・食事の現状についてお話しします。

陸上競技全体に共通する特徴としては、「地面反力(衝撃)が重要」、「動作が速い」、「反復性が高い」などがありますが、短距離・長距離・跳

躍・投擲などの種目特性により必要とされる栄養・食事には若干の違いがあります。現場における栄養・食事の現状として、「体重を落とす為に食べない」、「運動量に対して摂取量を調整できない」選手が目につきますが、とくに成長期の女子選手にその傾向が強いと思われます。貧血の予防・改善を理由とした鉄剤注射の乱用にも注意が必要です。女性アスリートの三主徴に対する正しい知識を持つことによって、選手から信頼・相談されるような指導者の存在が重要であるとともに、選手に対する早期からの栄養教育の必要性を強く感じます。

また、海外遠征時には必ずしもドクター・栄養士が帯同するわけではなく、健康面はトレーナーまかせになることもあります。1週間前に現地に入り、食事がしっかりと摂れず体重が23㎏落ちることもあります。このような場合に、サプリメントを摂取することは悪いことではありませんが、食事がまず基本であること、生活リズムを作るための基準点として朝食を欠かさないこと、あくまで補助的なものとして捉え、投薬・注射に結びつかないようにすることを教育することが重要です。

 

Ⅲ.スポーツ現場で求められる栄養サポート

これまでに述べてきたように、スポーツ現場では、種目特性や性別、年代などによる違いを適切に捉えた栄養サポートが求められます。また、選手を取り巻く様々なサポートスタッフの存在を把握し、協力して選手が良いパフォーマンスを出せるように連携する必要もあります。その中で、時代により変化していく栄養・食事に対応しながら、アスレティックトレーナーにも栄養に関する最新の知識を教育して欲しいと考えています。

 

(文責 津吉哲士)