スポーツドクターとスポーツ栄養士の連携
~アスリートサポートにおいて~
開催日 平成30年7月19日(木)
講 師 東朋病院 公認スポーツ栄養士
河村 亜希 先生
東邦病院で公認スポーツ栄養士として勤務されている河村亜紀先生を講師にお迎えした。河村先生は、これまでに様々なスポーツ現場でサポートをされてきた。その中でも、女子スキーのナショナルチームのサポートを行った経歴を持ち、平昌オリンピックに向けた2年間、海外遠征に帯同するなど、選手の食事面をサポートしてきた。海外遠征中は、選手の食事を毎食つくり、現地の食材調達の大変さなど、現場の実際の様子についてもお話を聴かせていただいた。
現在勤務されている東邦病院は、関西で初めてスポーツ内科が設置された病院であり、今回のメインテーマでもあるスポーツドクターとスポーツ栄養士の連携について講演された。スポーツ内科で最も多い女性アスリートの貧血の患者に関する症例及びパフォーマンス向上に向けたサポート方法を一例として、栄養士とドクターの連携についてお話を伺ったので報告する。
病院に来られるアスリートのなかで、最も多い種目が陸上競技であり、そのほとんどが貧血によるものである。来院された選手に対して、ドクターの役割としては、①貧血であるかどうかの診断、②血液検査の結果よりエネルギー不足による貧血である可能性を指摘する、③鉄剤の使用について慎重に検討するという流れである。その後、栄養士の役割としては栄養指導の場を設け、①必要なエネルギー摂取量を満たす食事の提案、②食事により鉄を強化する、③必要な栄養素を満たす、④食事のタイミングや食べあわせを考える、⑤体重のモニタリングを行うという流れである。それぞれの役割を全うし、患者のよりよい治療のために栄養士とドクターは、カルテ内容、血液データ、選手のコンディションやメンタル、症状、その他の測定結果をお互いに共有し、連携をとっている。また、アセスメントでは、対象者の特性に応じて、アセスメント項目や条件などを組み替えるが、食事調査、医師の問診結果、血液検査の3点については必ず聞き取るようにしている。
特にアスリートのエネルギー不足については気をつけなければならない。エネルギー不足により、女性の場合は無月経を引き起こしたり、骨粗鬆症により疲労骨折を繰り返したりすることが多くのアスリートで見られる。明らかにエネルギー不足のアスリートは多く、なおかつ、体重を増やすことや、炭水化物を摂取することに抵抗がある場合も多いため、食事内容や食事量の設定には慎重にならなければならない。
スポーツ貧血は、ヘモグロビン(Hb)、鉄(Fe)、フェリチン等を測定して診断される。スポーツ貧血になるときはまずフェリチンがなくなるので、フェリチンは早期に鉄欠乏を発見できる重要な指標である。しかし、アスリートにおけるスポーツ貧血の明確な基準値が今のところ無いのが現状である。高い運動負荷がかかるアスリートでは、一般人の鉄欠乏貧血の診断基準では不足と考えられるため、専門医の診断基準・治療目標を参考にする必要があり、それに基づいた食事の指導を行うことが大切である。
(文責 福祉 下岡伊織)