9月定例会

    講演:分かっていてもできない人をどうするか?  

       ~脳から考える無意識の戦略~

    開催日:平成30年9月20日(木)

    講 師:大阪産業大学 スポーツ健康学部スポーツ健康学科 教授 佐藤 真治 先生  

 

 大阪産業大学スポーツ健康学部教授の佐藤真治先生を講師にお迎えし、脳科学から考える健康行動のヒントについてお話しをいただいた。  

・『笑うから幸せなのだ』は本当か? フランスの哲学者アランは『幸福論』で「幸せだから笑うのではなく笑うから幸せなのだ」と記している。果たしてこれは本当なのだろうか? ・我々は“無意識”に支配されている 人間の心は気分 (無意識)と感情(意識)から成り立っており、同じように意思決定も自動システム(無意識)と熟慮システム(意識)から構成されている。我々が自分の意思でおこなったと思い込んでいる行動の多くは、実は無意識に支配されているのが現実である。

・サニーブレインとレイニーブレイン 無意識的なものとして、ものごとのとらえ方(アフェクティブ・マインドセット)がある。ポジティブなことに人を向かわせる脳の状態はサニーブレイン、ついついネガティブなものに注目してしまう脳の状態はレイニーブレインと呼ばれる。

最近の研究ではサニーブレインな人ほど社会的に成功しているという報告もある。 このアフェクティブ・マインドセットを前頭部の活動の偏りから測定することも試みられている。例えば、レイニーブレイン(社会的抑制がきいている・社会生活が出来ている)時は右の活動の方が左に比べて活動が高いのに対し、サニーブレイン(ポジティブな状態・好きなことをしている)時は左右が逆転することが分かっている。

ちなみに、笑顔をつくるとサニーブレインになれるのだろうか?実は、これは「気のもちよう」らしい。 

・ミラーニューロンがもたらすもの ミラーニューロンとは他者がした行為を見ただけでただちに理解し、反応する神経細胞のこと。あくびがうつったり、つい行列に並んでしまうなどの現象や他者に共感したり思いやりの気持ちが現れるのもこのミラーニューロンのはたらきによるもので、我々は無意識的に他者とのコミニケーションが成立してしまうのである。こちらが相手を見ているように相手もこちらを見ている。私たちはお互いに影響し合うのだ。

  ・分かっていてもできない人をどうするか 栄養士は対象者に対して、何を食べるようにしましょうとか生活習慣を見直しましょうと“意識”に働きかけている。

わかっていてもできない人にはどうするか?・・を解決するには、ミラーニューロンを鍛えて相手と同調し一体感を作ることにより、我々はお互いがお互いを必要としていることを対象者に感じてもらうことは有効だと思われる。そうすればできなかったことでも少しずつ取り組んでもらえるようになるかもしれない。

・まとめ  笑うから幸せなのだと信じて笑顔を作ろう。そうすると無意識がそうなり、きっと気分がよくなりサニーブレインになれる。そして、私の笑顔は相手の笑顔で再現されるのだ。  

(文責 佐野 紀子)