1月定例会報告
「ライフステージから眺めるスポーツと栄養」
開催日 平成31年1月17日(木)
講 師 龍谷大学 農学部 食品栄養学科
准教授 石原健吾 先生
龍谷大学農学部食品栄養学科准教授石原健吾先生をお迎えして、ライフステージから眺めるスポーツと栄養について最新の研究結果とご自身の経験を交えたお話をしていただいた。
スポーツの習慣は寿命の延伸につながると、最近の研究結果から報告されている。
スポーツの中でも複合的な動作を含み全身の筋肉を使う、生涯続けられる運動が健康寿命延伸に寄与する。
従って運動を行う際は、筋力トレーニングと全身運動の両方を行うことが望ましい。しかしどちらか一方を選ぶ際は、少年期、青年期は全身運動を行い、エネルギー代謝を上げ、メタボリックシンドロームを予防する。また、晩年期は筋力トレーニングを行い、介護予防をする。このように石原先生はライフステージ別に運動を選択することも重要と説いた。
次に、効率よく運動を行うための栄養について、現在研究対象のトレイルランニングという競技を基に教えてもらった。
トレイルランニングとはアップダウンや景観が楽しめるトレイル(登山道、林道等)を駆け抜ける、全身運動と筋力トレーニンングが合わさった、近年、人気が高まるスポーツである。
まず走り続けるためのエネルギーの主な供給源は糖質と脂質である。糖質と脂質の違いは主に3点ある。
①筋肉細胞内でエネルギーに変換できる速度が糖質の方が速い点。
②糖質は脂質より少ない酸素の量でエネルギーを産生できるので登りやペースアップ時などの運動強度が高く、呼吸が苦しい(=酸素が不足している)時ほど重要なエネルギーになる点。
③体内に蓄えられる量が脂質は約4万kcalと非常に多い一方で糖質は約1200kcalと少なく、競技時間が長くなるほど、糖質を中心に補給する必要がある点。
レースに際しては、まず疲労を回復して体内の糖質貯蔵量をためておくことが有効である。
方法は1週間かけて練習量をレースの日に近づくにつれて減らしていき、かつ糖質の摂取量を増やしていく。
試合当日は3時間前までに固形物を食べ終え、その後は消化の良い糖質などで空腹感と喉の渇きを抑えることが必要。(序盤のペースが速いレース程、大部分の血流が筋肉に回され、胃腸が消化吸収できなくなるためスタート時までに消化吸収を済ませておくことが重要となる。)
90分~3時間のレースは軽くスポーツドリンク、必要に応じてジェルなどを摂取し、3時間以上のレースは60~90g/時間のペースで糖質を補給する。
消化の良い糖質のジェルなどは摂取から15分程でエネルギーに代わり始め、1時間程度で消化吸収を終える。一方脂質は1時間以上経過してからエネルギーに代わり始め、6~8時間ほど持続する。そこで糖質と脂質を併用して補給することは、持続性を上げる効果がある。
またジェルやスポーツドリンクは一気に飲むのではなく、15秒間、口の中でいきわたらせると、脳に糖質を取ったという信号が入り、運動強度を上げられるようになる。
これらの一般的な栄養の取り方に加え、トレイルランのレースで高成績を出すには、事前に心拍数、血糖値を測定し、その結果から補給の量とタイミングを個人に合わせて調節する必要がある。
(文責 捧 園子)
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