成長期・ジュニア期のスポーツと食育
~和歌山県ゴールデンキッズの食育~
開催日 令和1年7月18日(木)
講 師 公認スポーツ栄養士 管理栄養士
村上 知子 先生
病院の栄養士から転身、和歌山県で唯一のスポーツ栄養士として活躍されている村上知子先生を講師としてお迎えし、和歌山県で取り組んでおられる成長期・ジュニア期に特化したスポーツ栄養の活動についてお話を伺いました。
食育という言葉は近年浸透してきましたが、ジュニア期におけるスポーツ栄養については、まだ発展途上の段階です。最近の子供の体力低下は文部科学省でも問題視されていますが、ジュニア期のスポーツ栄養の対象者といえば、トップアスリートや部活動をしている者だけでなく、学校現場におけるすべての児童・生徒が対象となるため、和歌山県では教育委員会とともに事業に取り組まれています。
[ゴールデンキッズ発掘プロジェクト]
趣旨は県内の優れた素質を有する子供たちを早期に見出し、世界で活躍できる競技者になるよう発達段階に応じて育成することです。
同じような取り組みをしている他県と比べて13年目に入った和歌山県の特徴は●食育に力を入れていること●競技を決めずに3年間育てることにあります。
小学3年生500名以上から30名ほど発掘し、4年生~6年生まで3年間育成します。
育成プログラムには①身体プログラム②知的プログラム③食育プログラムの他、アスリートプログラム、スペシャルプログラム(いろんな競技体験)、保護者サポートプログラム等盛りだくさんです。
村上先生はその中で食育プログラムを担当されています。教科書として八千代出版の『親子で学ぶスポーツ栄養』を用い、食事の基本、特に5つの食品グループ(主食・主菜・副菜・果物・乳製品)とそれらを組み合わせる意義、食事量、補食、水分補給、貧血、サプリメント等様々な講義の他、バイキング実習・調理実習・サマーキャンプ等を通して、いずれトップアスリートとしてみんなの代表になった時の土台となる正しい栄養の知識・マナーを教えます。
また、子供たちが栄養・食事について正しい知識を身につけても、実践するには保護者など周囲の大人の理解と協力が必要になるため、保護者向けには大阪体育大学の岡村浩嗣教授に講義を行っていただいています。
課題としては、3年間で得た知識のフォローアップの機会がないので、正しい知識が実践になかなか結びついていかないことや、他の情報に転嫁されて、いつの間にか正しくない知識にすり替わることなどがあげられます。
他の情報の中には健康情報番組はもちろんですが、もっと身近な保護者やスポーツ指導者の影響が多分にあるように思われ、今後もっと保護者や指導者に対するアプローチが必要でないかと考えられます。
[スーパー食育スクール事業]
体力向上の為に必要な運動できる身体作りとそのための毎日の食事の見直しを目的として、文部科学省の認定を受けH26,27年度に県内の高校生80名ほど対象に学校の先生と一緒に行った取り組みです。
食事アンケートから始まり、食事調査、体力測定、血液検査、骨密度測定などの他、食事カードを使ったワークショップ、調理実習も行われました。調理実習は1食○○㌍として献立作成から考えるより実践的な内容です。
高校生にもなると体組織の管理なども入ってきますが、ここでも正しい知識の定着から行動変容まで進めないことが課題にあがりました。
この2つの事業を通して見えてきたものとして
◎食行動の変化につながるようなアプローチを考えること。例えば個々の食事内容についてのアドバイスや身体組成の変化と食事の変化の関係性が見えるようなフォローアップの仕方。
◎食環境の整備。例えば保護者・特に指導者に対するセミナーや学食・寮の食事メニュー改善などが挙げられます。
そして、こういった事業では各都道府県が比較できる統一した
指標が欲しいものです。
お話を聴き、これからより一層、成長期・ジュニア期の子供たち、周囲の大人たちに正しいスポーツ栄養が届けられるよう私たちも活動していきたいと思いました。
(文責 井上 諭美)