コロナ禍の東京オリンピック 試合当日までの栄養サポート
開催日 令和3年11月18日(木)
講 師 森永製菓inトレーニングラボ
公認スポーツ栄養士 三好 友香 氏
2021年7月コロナ禍(緊急事態宣言下)のなか東京オリンピックが行われました。その大変な環境の中で栄養サポートをされた公認スポーツ栄養士三好友香氏にお話を伺った。
まずは一部工事中のinトレーニングラボのなかを案内してくださいました。見る機会はなかなかあるものでは無く、興味深いものでした。
以下、三好氏の栄養サポートについてのお話です。
「楽しく・笑顔で・柔軟に」をモットーに自己調整力の高い選手を育成すること、また、ニーズに柔軟に対応することを意識して活動している。その中で「競技特性を知る」・「選手の特性」を知ることが大切であると考えている。
オリンピック選手になるためには「国内試合→国際試合(アジア選手権・世界選手権)→内定獲得しオリンピック出場確定」の流れで決まるので各試合でポイントを獲得することが必要になる。どの試合にピークを持っていきポイントを獲得するか難しい側面もある。
競技ごとの選考スケジュールは複雑な経緯がある。それに加えて一年延びたことで選手権を逃してしまうこともあり、選手共々苦々しい思いも経験した。
そもそも東京オリンピックが実施されるのかどうかも分からず不安のなかで、目標を定めきれず精神的にきつい状況が続いていた。
某選手への栄養サポートです。
(選手の特徴・栄養サポート対応等について)
Aさん:陸上選手
・主に自炊
・食に興味がない(時には食事をすることをも忘れるほど)
・たんぱく質1.2~2g/㎏
・体重が落ちやすい(軽いと体が浮いてタイムが落ちる)
・補食計画を作成し提供(250~300kcal)
・フェリチン低値に対する栄養教育を行う
・帯同時は種々の食材を駆使し「苦痛なく美味しく食べられる」を目指し提供した。
Bさん:柔道選手
・主に自炊(定期的に食事分析)
・自己調整力があり、減量のしかたを自分で確立している(選手の感覚を大切にした)
・好きな食べ物を無視しない(チョコとコーラ)
・たんぱく質2.1ℊ/kg
ワンタップ(ONE TAP SPORTS)を使って毎日のコンディショニングを可視化し指導に役立てた。また、オリンピック当日のスケジュールにあわせて栄養補給計画など2回ほど試合前にプレを行った。
現地で観戦することができず残念な今回の東京オリンピックであったが、「オリンピックがあってよかった」と感じている。担当した選手の中では銀メダルが最高の結果であった。
選手の精神状態がきつい中、どのような声掛けがよいのか思案する日々であった。
この状況では栄養の正しい知識や情報を伝えるというような段階ではないなという場面も多く、栄養サポートの難しさを痛切に感じた。
2024年のパリオリンピックに向けて、選手と共に目標を達成できるスポーツ栄養士を目指したい。
現場の選手の状況や栄養サポートの状況が目に浮かぶ臨場感のあるお話を聞くことができた。