持久系スポーツの栄養学
〜160キロ走ってみた研究者目線から〜
開催日 令和4年7月21日(木)
講 師 龍谷大学 農学部 食品栄養学科
教授 石原健吾 先生
■持久系運動のスポーツ栄養概論
食事がアスリートにもたらすメリットとして、栄養の機能としては次の4項目と考えることができる。
① 練習と試合にエネルギーを供給する。
② リカバリーを増強する。
③ トレーニング効果を最適化する。
④ 体重、体格の実現と維持できる
上2項目(①②)はすぐに効果を感じることができるが、下2項目(③④)は効果を感じるまでには時間がかかるが、必ず効果がでることを信じて続けることが大切である。
今日は①に関する持久系のエネルギー補給に絞って話す。
エネルギー補給に関して燃費がよいハイブリッドカーに例えて考えてみると、ガソリンは体脂肪、バッテリーはグリコーゲンと考えることができる。
アスリートには長時間走るガソリン(体脂肪)と加速したり減速したりするバッテリー(グリコーゲン)の両方使うことが必要で効率が良い。
体脂肪を燃やすためには、酸素が必要であり、
筋グリコーゲンは運動によって減少するが、高糖質食によって超回復する。
グリコーゲンローディングのメリットのあるなしは、運動時間が90分以上の競技か、糖質摂取制限(糖質摂取量が8~9g/kg以下)している体重増加がマイナスになる競技か、によって決まる。
競技前には空腹感、胃内残存感、口渇感のないように3時間前には、食事を終え、その後は消化の良いもの(ゼリー、バナナ、ドリンクなど)で糖と水分と電解質を摂取することが大切だが、どれぐらいか、いつ食べるか、人によって違うので自分で微調整する必要があることをしっかり伝える事が大切であると感じている。
運動中の補給で大切なものとして、まずは電解質で、次に糖質である。
運動中に低血糖にならないことが重要で、いかに食べ過ぎず、適度に食べて走れるかがテーマである。
<運動時間によっての糖質補給について>
・1(~1.5)時間以内⇒なし、または少量
・1~2時間⇒30g/時
・2~3時間⇒60g/時
・3時間以上⇒90g/時(果糖を入れた方が良い)
※グルコース:果糖=2:1
短時間運動のとき飲まなくてよいが、少しでも飲むか、マウスリンス(口に含んで飲み込まずに吐く)はちゃんと効果や疲労感をなくすということが分かっている。
<超長時間運動時に大量の糖質摂取介入試験>
(60g/時、90g/時、120g/時について検討)
90g/時以上摂取でパフォーマンスは上がったが、消化管トラブルが起こるリスクがありそうだという結果であった。
■スポーツ栄養学的課題の宝庫としてトレイルランニング
ライフステージ全般においてトレイルランニングに期待される健康増進効果
① メタボリックシンドローム予防効果
② ロコモティブシンドローム予防効果
③ 自然環境と触れ合うことでメンタル機能改善
中高年や女性を中心に競技人口が増えている。
■スポーツフーズとダイエタリーサプリメントに対する多様なニーズについても紹介があった。
最新の貴重な情報に触れることができ、感謝です。
(文責 捧 園子)