日時:令和4年9月15日(木)19:00~20:30実施しました。
パラ陸上知的障がい選手にたいする栄養サポートの事例報告
公認スポーツ栄養士
村上裕佳子 先生
村上先生はハイパフォーマンス・サポート(HPS)のスタッフとして参加されました。
以下先生のお話です。
ハイパフォーマンス・サポートとはスポーツ庁からの受託事業で、スポーツ庁が定めるメダルが取れそうな競技(ターゲットスポーツ)に対してサポートを行う事業。
ターゲットスポーツは2年ごとに変更される。
■パラリンピック競技指定競技(2016年~2024年)
夏季競技(アーチェリー、カヌー、車いすテニス、水泳など24種目)と冬季競技(アイスホッケー、アルペンスキーなど6種目)がある。
上記種目のなかでも知的障がい者がでられる競技は7人制サッカー、水泳、卓球、陸上競技の4つのみに限られている。
■知的障がいとは
<定義>
知的機能の障がいが発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とするもの(厚労省)
■知的障がい者スポーツの歴史
1968年初の国際大会(スペシャルオリンピックス)が開催され、1996年にアトランタパラリンピックにて知的障がい者種目が追加された。
一時中止もあるなど紆余曲折もあったが、2012年ロンドンパラリンピックにて再開された。
■知的障がい者のパラリンピックの出場条件
・IQスコアが75以下である
・コミュニケーション能力や生活自立能力、社会的、対人的スキルなどの適応行動に制限がある
・障がいが18歳までにあらわれている
■パラ陸上競技団体
・JPA日本パラ陸上競技連盟(身体・視覚)・JBMA(認定NPO法人)日本ブラインドマラソン協会(視覚)・JIDAF(NPO法人)日本知的障がい者陸上競技連盟(知的)の3つがある。
■知的障がい者の栄養面における課題
学校教育においては、栄養は抽象的概念であるため知的障がい児童・生徒に栄養教育は難しいという意見が多い。
■今回担当した対象者について
東京2020パラリンピック競技大会の陸上競技トラック種目に出場した女子選手1名(18歳以上)
知的障害、精神障がい、てんかんを持ち合わせていた。
こだわりが強く、食事に興味を示さず、水分摂取も思うように取れないこともあった。
合宿時には2528kcal、たんぱく質は体重2.5g/kgとしたが、もともと少食で食事には苦手意識があり食べたがらない傾向で残すこともあった。
「自身に必要な食事のバランスを知り食物選択行動を改善すること」を目的とし、種々の栄養教育を実施し関係者との連携を心がけた。
栄養教育に食事ブレスレットを作成しブレスレットの玉に米・パ(パン)・・・13個に意味のある文字を記入し食べたら裏返すというようにした。
毎日お菓子を必要以上に摂取することから、コンビニエンスストアでの買い物学習で、お菓子は脂質量が10g未満のお菓子を選ぶように指導した。
結果、介入一ヶ月後摂取食材は増えたものが多かった。自分がなにを食べているかを知り、食物選択行動が改善し、食事内容が変化した可能性も考えられた。
知的障がい者の栄養指導の難しさと、可能性を感じることができる具体的なお話を伺うことができた。 (文責 福祉 捧 園子)