スポーツ現場における身体計測の活用方法
開催日 令和4年11月17日(木)
講 師 女子栄養大学栄養科学研究所
准教授 香川雅春 先生
ヒトの測定から得られるサイズ、形態、プロポーション、体組成などの計測情報を様々な分野に科学的アプローチすることを推進し、その普及を目的とする国際キンアンソロポメトリー推進学会(ISAK)がある。その学会で日本唯一人、最上位レベル4の認定を受けておられる香川雅春先生のお話を伺うことができた。
■最高のパフォーマンスには身体が資本
スポーツを楽しむ者、アスリートとして勝利を目標とする競技者は、身体を定期的に評価することでパフォーマンスの状態をモニタリング・管理することが可能になる。
その評価の方法の一つとして、一般に使われている体脂肪計による体脂肪率はメーカーによって推計式に用いる属性が違うため、その数値を100%信用することはできない。
■身体計測の長所
※身長、体重、皮下脂肪厚、長径、幅径、円周(周囲長)周径などの身体計測
・比較的安価
・優れた携帯性
・簡便性
・非侵襲性
実測値の値の活用、推定式に代入して目的とする項目の値を推定、基準モデルとの比較、ソマトタイプ(体格を体型に類型化して数値化し、体格を大まかに説明できるもの)の算出することもできる。
推定式に代入し身体組成を知ることができるなどの汎用性が最大の長所ということができる。
■身体計測の短所
・計測者の技量に影響を受ける。
・物理的接触がある。
・計測には一定の時間が必要である。
・計測基準や計測機器が多数存在する
などの短所がある
■エリートレベルほど選手間で体格が類似
① 投てき競技(円盤投げ、砲丸投げ、投げやり、投手)は身長が高い、下肢に対して腕が長い、上腕指数が高い
② ジャンプ競技は比較的身長が高い、胴体に対して足が長い など
例えば、相撲のような参加条件(身長167cm以上、体重67kg以上)がある競技も存在するし、競馬学校に入学するためには年齢、及び年齢に対する体重が定められているものもある。
スポーツ競技を行う上で最高の体型および体組成があるが、望まれる身体サイズは時代によって変わるものもある。
また、青年期では発育発達の影響も考慮する必要がある。初潮の発現年齢と身体組成において、一定レベルの体脂肪の蓄積が思春期の発現につながるという報告があり、発育とエネルギーバランスの定期的な評価が重要である。
時に選手の思い込みによるボディイメージがあり、修正が必要なこともある。
四肢のプロポーションは遺伝的要因が強く将来のタレント発掘に活用できる。
■選手のコンディショニングにおいて
身体計測だけでは不十分で、食事の増量があるか、その質はどうか、トレーニング量に見合わないプロテイン摂取はないかなどの食事やトレーニング内容を把握したうえで、コンディショニングを評価するべきである。
さまざまな角度からの身体計測について知ることができた。今後の活動に活かしていく方法を探っていきたい。
(文責 捧 園子)