2023年1月定例会報告

「運動器障害に配慮したウォーキングとランニング」

 ~ロコモ対策としてのセーフティウォーキング~

       開催日 令和5119日(木)

       講 師 医療法人貴島会ダイナミックスポーツ医学研究所

    顧問 土井龍雄 先生

 


土井先生はトップトレーナーとして武豊騎手や太田雄貴選手などのスポーツ選手やチームをはじめ、ロコモ対策として高齢者への運動指導に携わられるなど幅広くご活躍されています。

スポーツ選手だけでなく、一般の方々にも共通する故障を起こしにくい歩き方やランニングについてのお話を中心に伺いました。

以下先生のお話です。

加齢による歩き方の変化が起きているにもかかわらず、無理な歩き方をしていると、バランス機能低下を起こし、歩かないようになる。その結果、血流が悪くなり、種々の生活習慣病、認知症、うつ病にもつながることがある。

歩くことによって身体に機械的負荷(メカニカルストレス)がかかり故障を起こすことがある。故障を起こしにくい歩き方をするためには「関節軟骨による衝撃吸収力」、「周囲の筋力による関節安定と衝撃吸収」、「運動器の使い方(衝撃の少ない歩き方)」が重要になる。

そこで、歩いているときのメカニカルストレスを計測する機器を用いて指導している。

その機器は、下向きにどのくらい衝撃がかかっているか、前向きにどれだけブレーキをかけているか、上にどれだけ蹴り上げているか、左右にどれだけぶれているかのメカニカルストレスを瞬時に計測できる。

どのような歩き方がよいのか長寿ウォーキングの特に大切な4つのポイント

1)無理のない歩幅でウォーキング

2)左右の足の間隔(4~5㎝)をとって歩く

3)つま先と膝を進行方向に向けて歩く

4)かかとから足裏全体に柔らかく着地する

歩幅が狭すぎると転倒しやすく、歩幅が広すぎると着地衝撃が大きくなる。上半身はまっすぐに保ち無理のない歩幅であるくことが大切で、子どもの頃から心がける必要がある。

走り方においては、上下運動が小さく後ろに蹴らない走り方がよい。はやく走る時、また、はやく歩く時も、重力をいかに利用するかということが重要になる。

衝撃の少ない滑らかな走り方(メカニカルストレスの少ない走り方)は有酸素運動を継続することができ、持久力アップにつながる。

健康づくりウォーキングとしての4つの方法

1)インターバルウォーキング

「遅い速度で3分→速歩で3分」の繰り返し

2)ウォーキングストレッチ

「ウォーキング35分間→下肢や背部のストレッチ23種目」の繰り返し

3)ファルトレクウォーキング

「平地→上り坂→平地→下り坂→平地→階段上り→階段下り」の繰り返し

4)ウォーキングサーキット

「ウォーキング3分間→筋力トレーニング5カウント×510セット」の繰り返し

ウォーキングサーキットで糖尿病患者の指導をすると耐糖能が改善した。

※2)3)4)は土井先生の考案

 

東日本大震災で被災された方々が仮設住宅に入られてから引きこもりが増え、要介護者が増えた。先生は依頼をうけて仮設住宅400カ所を巡回し歩行指導や体力づくりの講習会を実施された結果、要介護者が減った。その功績により先生は2018年には「運動器の10年・日本賞」、2022年には「保健文化賞」を受賞された。

運動指導する時には運動と栄養の両方を組み合わせて指導していくことが大切だと締めくくられました。

お話は興味深く、また、大変参考になった。

 

                       (文責  捧 園子)